Long way Loves

いっぱい会って、いっぱい話して、でも答えは出ない。 一緒にいたくて、会いたくて、躊躇しながら今に至る。

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何事もなかったように仕事を続ける。
PCの前に座りながら、ついボーっと考えるのは、キスのこと。
唇に触れた感触。思い出すのは、その柔らかさ。
そんな夢心地気分にユラユラ。

ちょっとした仕事上でのトラブルが発生した。
決定権のない私では、解決も対処も出来ない。
フォローはあの人が引継ぐ。全面的に私は頼るしかない。
愚痴をこぼした私に、あの人から社内メールが届く。

 みんなは行かないと思うけど、飲みに行きますか?
 うっぷんは私が聞きますよ(笑)

初めてあの人と二人で待ち合わせをした。
金曜のお店は何処もほぼ満席。カウンターに座る。
距離が近づく。話をしていると、どんどん距離が近づく。
2時間程飲み、足元がフラフラした頃、店を出る。
「大丈夫か?おまえ歩けていないぞ」
「は〜い。大丈夫で〜す」
と答えながら、そのまま崩れ落ちて道路にへたり込む。
仕事の後のアルコールは酔いも早い。
「どっかで休んでいくか?」
「喫茶店、行くー」
「喫茶店?今から?」
「じゃーカラオケ〜」
「横になった方がいいって。ホテル行くか?」
「・・・え?」
「何もしないって!休むだけ」
「あはははー。だよね。何かあったら、まずいもんねー」
「酔いを覚ますだけだから。おまえ、それじゃ帰れないでしょ」
「う〜ん?」
「ホテルで休憩して帰るぞ。きまり!」
あの人が強引に言い切った。
私は、しがみつくようにして後をついていく。

辿り着いたのは、ビジネスホテルのシングルのような雰囲気の部屋。
まるで旅行帰りの気分になる。
「シャワー浴びるか?」
「えっちしないよ。休憩するの。少し寝るぅ」
私はベットの上に転がり、体を丸くして顔を隠す。
あの人が腰掛けて、私の上に覆い被さる。
軽いキス、ディープなキス、当然のように服の中に手が入る。
「あ、ダメだって。ダメだよ」
そんな言葉は、すり抜けていく。
「初めてじゃないでしょ?」

 ラブホテルに入るのは初めてだよ。
 不倫するのも初めてだよ。
 浮気も初めてだよ。

私は心の中で呟いた。
そんなことを考えている間に、どんどん服は脱がされていく。
「だめだめ。だめだよ」
あの人とのキスは気持ち良くて、体の奥から、とろける感覚。
抵抗どころか、力が抜けていく私に対して、やめるはずもない。
「・・・んっ・・」
「感じているんだろ?」
体の中にあの人の指が入る。動く。震える。撫でられる。
私は背中に腕をまわし、声を出していた。



何もしないなんて言葉だけ。何もないはずもなく。


一度のキスならともかく、舌を絡めて服の中に手を入れておきながら、
何もなかった素振りで逃げるつもりなのか。
あの人が今、どんな顔してどんな思惑でいるかは、メールではわからない。
私が「覚えてない」と言えば、ほっとするのかもしれない。
お酒のせいにして記憶にないことにした方がいいのか迷っていた。
でも、それも何だか悔しくて、少し困らせてみたかった。
他の誰かに知られたら、社会的に立場が悪くなるのは当然のこと。
あの人が不安に思っているかもしれないから。



それから2日後のこと。

内線が鳴る。あの人からの内線番号。仕事の話だ。
電話では対応できないことだから、あの人の席へ向かう。
冷静になろうとすればするほど、心臓が強く主張する。
私の精一杯のポーカーフェイスを作らなければ、この勝負は優位に立てない。
何もなかったのだと暗示をかけて階段を登る。
いつもと同じってどうだっけ?普通ってどうだっけ?
この鼓動の早さは階段を登ったせいだ。だから息を整えてドアを開けなくては。

「あの後、大丈夫だった?」

それはメールでも返したじゃない?同じことを聞くんだね。
私の反応を見たいのだろうか。なら、普通に返答するよ。

「飲みすぎちゃいましたね〜」

直視できなくて、うつむきながら、平常心を保つように、答える。
ちょっとした沈黙。顔をあげると真っ赤になったあの人がいた。
予想外に赤面された姿にびっくりして、私はそれ以上突っ込めなくなった。



この人は、手馴れているわけじゃないのかもしれない。
(不倫なんてと思ってた 続きです)


タクシーに乗る前にあの人の部下が言った。
「大丈夫かなぁ・・・信じてますよ。ちゃんと送って下さいね。」
私はタクシーに乗り込む時、入り口に頭をぶつけて転んだのだ。
あの人が私の腰あたりを抱えて席に座らせる。
私は一人で歩けない完全な酔っ払いに見えたのだろう。
タクシーに行き先を伝えて、走りだして、すぐ。

「頭ぶつけた所、大丈夫か?」

あの人が私の耳元で問いかける。そして子供をあやすように頭を撫でる。
そしてそのまま、息づかいが感じられるくらい近づいて。
キスされた。
私は何の反応もしなかった。動けなかった。
お酒で酔っていて、抵抗するのは失礼だと思った。
でもそんなのは言い訳で、本当は戸惑いながらも嬉しかったんだ。

そこから、何度も何度も、キスした。
運転手さんが運転しているのに、何度も、何度も、ずっと。
頭を撫でていたあの人の手は、私の腰に移動し、胸に移動する。
そのうち服の中にスルリと入り込む。
キスを交わしながら、舌を絡める。あの人の手が私の中で動く。

渋滞になってしまえばいい。家に着きたくないとさえ思う自分がいた。
タクシーから降りた私は、キスと触れられた感触に足元から崩れ落ちた。
あの人が家の前まで手をひいて、最後にまたキスをして別れた。


翌週。
社内メールが届く。

---先週はお疲れ様。大丈夫でしたか?また行きましょう。

それだけ。なんてことない普通のメール。キスのことに全く触れないメール。
私が酔っているから、何も覚えていないと思っているのだろうか?
あの人も酔っていたから、覚えていないフリをしているのだろうか?
私の返信で探ろうとしているのだろうか?
もしかして、慣れている?

私もキスには触れずに返信をした。
部署が違うから、次の打ち合わせまで顔を合わせることはない。


次の打ち合わせは2日後にある・・・。
今、帰宅途中です。

遅くまでお仕事お疲れ様です。
まだ電車かな?座れてるかな?座れているといいな。

座ってるよ。ありがとう!
あの人とは、去年から仕事を一緒に始めて、接点が多くなった。
細かい内容を知らない私に対し、あの人が一つ一つの意味を解説してくれ、
それを私が形にしていく共同作業。

完成が近づくにつれて、打ち合わせる内容も頻度も高くなる。
仕事とは別に交わす会話も増えていく。

進捗を確認しあう電話の後に「今度飲みにいこうね」の言葉。
社交辞令だとわかってるから「どこでも行きます〜」と返事する。

本当は、もっと話したい、もっと傍にいたい。
やわらかい言葉のトーンが脳に響く。あの人は優しい。
ふとした言葉の節々に余裕が感じられ、私は何度となく助けられた。

年の差は、ひと回り以上。
ここからスタートの私と、ここまでを生きてきた違いがある。
あの人の持っている経験に基づいたアドバイスと気遣い。
私の知らないこと。私にはないもの。
だからこそ私は、あの人に惹かれ、憧れるのに時間はかからなかった。

あの人に家庭があったとしても。



金曜にあの人の部下から、社内メールが届いた。

---うちの部署で飲みに行きます。一緒にどうですか?

日本酒と焼き鳥の美味しい店。あの人を入れて4人で飲んだ。
周りの飲むペースは早く、楽しい雰囲気にのまれ、
私はお酒に弱いくせに、いつも以上に飲んでしまい、
店を出る時には足元がふらふらだった。

「大丈夫か?タクシーで帰るか?」

あの人が私を左側から支えた。
そのまま駅までの道を寄り添うようにして歩く。

ちゃんと歩けたかもしれない。
だけど、近くにいて欲しい気持ちが甘えに変化した。
ふらつくことを言い訳にして、あの人にしがみつく理由が必要だった。

「は〜い。タクシーで帰ろう〜!」

終電はまだある時間。だけど、酔いに任せて、ノリで答える。
一緒にいる時間の延長はいくらだって大歓迎なチャンスだ。
私とあの人。二人、タクシーに乗り込む。
行き先は私の家の近くまで。距離は時間にして30分。
タクシーが動き出す。
空間は不特定多数のお店から、二人の空間へ変化する。


唇に柔らかい感触。



そこから私達の関係がゆっくりと動き出していった。
全部、覚えてるよ。
おまえ、言うなよ?
言わないよ・・・言えないよ。

ありがとう。気をつけて。

ほら、しっかり。
怒るよ。泣いちゃうよ。もう知らないよ。
とりあえず早くなおせよ。

しーっ しーっ。内緒だよ。秘密だよ。

飲みに行くの?なんか羨ましいんだけど。ちゃんと報告書を提出するように。
T主任に「雰囲気変わった。きれいになった。何かあった?って言われたよ」
詮索されたのかな。ま、いっか。
気にしない、気にしない。
お酒は2杯飲みました。だから酔ってませんよー。
変なことも言ってませんよー。

充実してるよねぇ・・・。

全くもう!誰にも言わないから正直に言いなさ〜い。

本当なの?自信がないよ。
どんどんダメになっていくような不安があるの。

金曜日、営業部も飲んでいたらしいよ。
もうね、サーッと血の気がひいたの。

「メリークリスマス」とりあえず、これが言いたくて。

たぶん来ないと思うけど、来たら逃げる。
まともに話をしたことないけど、何か苦手なんだ。
そのまま「電車がないので」と言って逃げてきたよ(笑)
近づかない方が良いよ。離れてた方が良いよ。危ないから。

一緒にいたいけど。

話すことで楽になりますように。

いろんな要因が絡んで一気に糸がほどけた感じがする。

あはは。笑ってしまいました。ごめんね。
何も言われなくてズルイ。
え。それって私の感情丸出しということだったのか・・・(゜〜゜;)
正直で感情が顔に出るから、みんなにわかるんだよ。沙奈子が素直だって事。
違うよ。環境がいいからだよ。

オフレコで今度話ちゃお。
心配してくれてありがとう。今度、ゆっくり話すよ。

仕方無いね。

困った。本当に困ったね。
一緒に考えよう。
今度、話したる。
うん。
何かが始まったわけじゃない。
始まるなんて考えたらいけないの。
覚えてないフリはしないよ。
言動すべて、あたしの中に全部残ってる。

あの時を境にして、ぐるぐる駆け回る衝動。
近くなればなる程、望んでいたことから逃げたくなる。
階段を登った言い訳に、呼吸を整えて、心臓の音と、顔の赤みを消す。
ここで避けたら拒否と等しい。

普通って何だっけ?
いつもと同じってどうだっけ?

あたしの中で彼の言葉が動いている。伝わっていく。
そして何も知らないフリをして、やり取りをするんだ。
強いからじゃない。
足りない何かを補おうとする本能に近い。
得てしまえば、また別の足りない欠片を求めていく。
だから丸ごと受けたくない。
終わりを見たくないから、始めたくないんだ。

予感が現実になる。
仕組んで現実にしてしまったのか、そういう流れだったのか。
黄色の信号で加速する。密かに望んで飛び込んだ場所。
その勢いは先にあるものを見ないフリをしている。

「だから」と「だけど」が、繰り返す。繰り返される。